◇がんが治るのは奇跡ではない

骨髄造血説から生まれた骨髄移植の誤り

現在、テレビでも骨髄バンクから骨髄ドナー提供の呼びかけがなされていますが、その根拠は、骨髄造血説から生まれた骨髄移植による、白血病(血液がん)治療です。

以下の文章も稲田義弘著『「ガンの呪縛」を解く』から抜粋、引用した内容です。

骨髄造血説とは、1886年、アメリカの3人の血液学者がニワトリとハトを10日間絶食させた後に観察した結果、骨髄で血液がつくられていることを確認したことによるものでした。

そして、ニワトリとハトを10日間絶食させた理由は、健康な状態では骨髄内に脂肪が充満していて造血が観察できなかったことによるそうです。

この結果にもとづき、骨髄造血説が医学界での定説となり、千島博士の膨大な観察データにもとづく「血は腸で作られる」という「腸造血説」は無視されたのです。

骨髄移植とは、血を造り出す骨髄が異常な血液がんを造るのであるから、まずは、がん化した血液を抗がん剤で殺した後、正常な他人の骨髄を移植するというものです。

骨髄移植は千島博士存命中にはまだポピュラーになっていなかったので、千島博士はそれについてはなにも語っていません。しかし、もし千島博士が骨髄移植を知ったとしたら、間違いなく反対したことでしょう。というのは、血液の重要性をだれよりもよく知る千島博士は、輸血にすら異議を唱えていたからです。まして、自分の血を抗がん剤や放射線で徹底的に殺し尽くし、そのうえで他者の血とまるごと入れ替えるという発想には、ただ驚き呆れたにちがいありません。

科学や医学理論は、ときにはとんでもない錯覚や間違いをおかすことがあります。しかも、その定説の上に大量のさまざまな研究が複雑なかたちで積み重ねられてしまうので、その巨大な学問体系の基礎を取り替えるのは至難のわざなのです。

それに加えて医療の場合は、「理論→治療法→医療産業」というさらに巨大な構造物ができあがってしまっています。それなのに、千島博士は「その基礎そのものが歪んでいる」と指摘しました。つまり「血は実際には腸で造られているのだから、血が骨髄で造られているという定説にもとづいた治療は間違っている」としたわけです。

骨髄こそが血液を造るという骨髄造血説のその大前提がいまや大きく無残に崩れつつあります。というのも、造血幹細胞は骨髄のみならず、靭帯の中を流れている血からでも、また末梢血からも得られることがわかってきたからです。