◇がんが治るのは奇跡ではない

喜べないがんの早期発見

前述の岡部哲郎医師は著書『西洋医学の限界』の中で、がんについて次のような内容を述べています。

がんの早期発見、早期治療が重要であると叫ばれるようになって久しく、一定の年齢を超えると、さまざまな部位のがん検診を受けることが推奨されています。皆さんも会社や自治体を通して、あるいは個人的に、定期的にがん検診を受けていることでしょう。

がんの早期発見は、決して悪いことではありません。診断精度も一時代前に比べて格段に上がり、早期発見は上昇しました。

しかし、実は、がんの早期発見率が上がっているにもかかわらず、がんによる死亡者数も死亡率も、数字の増加に歯止めがかかっていないのです。毎年毎年、がんによって亡くなる方は増えています。

国立がんセンター発表の「人口動態統計によるがん死亡データ」では、がんによる死者数は

2000年 295,484人、2010年 353,499人、2017年 373,334人

となっています。

「がん検診をしろ」「早期に見つかったらすぐに治療しろ」と、国を挙げて言われているのに、がんによる死亡者数の増加を止められないのはお粗末というしかありません。高齢者社会であることを考慮しても、数字が減らなければ対策が有効であるとはいえないでしょう。

私はここにも、西洋医学の限界が垣間見えると思っています。

仮に早期発見に至ったとしても、早期治療がベストであるとはかぎりません。

がんのなかには致死率の低いがんも存在します。

その代表格が前立腺がんです。

前立腺がんは痛みなどの症状が出ることがほとんどないため、その存在に気づくことなく、別の原因で亡くなる男性はたくさんいます。死体解剖の結果、直接的な死因とは無関係の前立腺がんが見つかるケースが多く、100人中70人の男性が前立腺がんになっているという調査結果もあるくらいです。

それでもなお、血液検査などで前立腺がんが早期発見されると、即時の手術や放射線治療を勧める医者が、世の中にはまだまだごまんといます。そのままにしておいても命を落とす可能性が低いのに、なぜそんなことをするのか? 過剰医療もはなはだしいといわざるをえません。

結果的に患者さんはむだな出費を強いられ、場合によっては副作用に苦しむこともあります。

がんの早期発見がベターでも、早期治療がベストとはかぎらない。早期発見率が上がっても、今の医療技術では死亡率を下げることができない。そのことを肝に銘じて、がんと向き合うようにしてください。